『七尾市一本杉通りの記憶と新たな未来をつなぐプロジェクト』
11月15日の授業は、「のと熱中授業」とのクロッシング開催として実施しました。
「のと熱中授業」とは――
能登半島地震からまもなく2年を迎えますが、現地では今も復旧・復興に向けた取り組みが続いています。一方で、全国的には報道が減り、関心が薄れつつある中、「能登のことを忘れないでほしい」という声が現地から届いています。
熱中学園では、こうした声に応える形で、能登の文化・生活・産業などをテーマにした「のと熱中授業」を、2025年4月から1年間にわたり実施しています。
▼のと熱中授業の詳細はこちら
https://www.korobocl.com/keen_class/
丸森復興分校は、2019年の台風災害からの復興に寄与することを目的の一つとして、2020年に開校しました(災害被災地での開校第1号)。
同じ“被災地”として分かち合えるもの、そして相互の学びを通じて、それぞれの地域の復興・振興につなげていきたい――。そんな思いから、今期は「のと熱中授業」とのクロッシング授業を全3回実施します。
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11月授業は、石川県七尾市の建築士・岡田翔太郎先生、そして富山大学名誉教授で街並み保存の専門家でもある丸谷芳正先生を講師にお迎えし、「災害と街並みの再生」「歴史的建造物をどう残していくか」をテーマに学びました。
岡田先生からは、能登半島地震発災後、地元・七尾で復興に向き合ってきた取り組みについてお話しいただきました。震災直後、恩師から「地域で活動する建築家として、地域に貢献しなさい」と背中を押されたことをきっかけに、自身の仕事や立場を見つめ直し、建築士として地域に関わる覚悟を固めたと語られました。
その実践の一つが、七尾の伝統的な祭り「でか山」を小さく再現した「ちびでか山」プロジェクトです。震災の影響で本来の祭りが開催できないなか、「大きすぎてできないなら、小さくしてでもやろう」と立ち上がったこの取り組みは、地域の子どもたちだけでなく、大人たちにとっても大きな希望になったそうです。被災した街並みの中を、未来への願いを込めて進む“ちびでか山”の姿は、復興の象徴として強く印象に残るお話でした。
また、一本杉通り商店街では、震災前の街並みを1/100スケールで再現した復元模型を学生ボランティアとともに制作し、その模型を使いながら住民同士で未来の街のあり方を考えるワークショップを重ねていることも紹介されました。単に「昔はよかった」と懐かしむのではなく、過去の記憶を土台にしながら、これからどんな街にしていくかを考えるための道具として模型を使う。その発想に、参加者も大きく引き込まれていました。
さらに、解体後に生まれた空地を花でつなぐ「一人一花 in 能登半島」の取り組みについてもお話しいただきました。空地に花を植えることを通して、人が集まり、会話が生まれ、地域に少しずつ明るさが戻っていく。建築や制度だけでなく、日々の暮らしの中にある小さな営みもまた復興の大切な一部なのだと感じさせられました。
一方、丸谷先生からは、長年にわたり街並み保存や伝統木造建築に関わってこられた立場から、「なぜ災害のたびに日本の伝統木造民家が失われていくのか」という、より根本的な問いが投げかけられました。
先生は、その背景として「経済的理由」「建築的理由」「文化的理由」の三つを挙げられました。日本では住宅が資産として評価されにくく、年月が経つと価値が下がるものとして扱われがちであること。現行の建築基準法の中では、伝統木造建築が“既存不適格”として不利な立場に置かれやすいこと。そして、建物の外観や街並みを地域全体の共有財産として捉える意識が弱くなってきたこと。そうした積み重ねが、災害後の「やむを得ない解体」へとつながっているのではないかと語られました。
しかし同時に、伝統木造建築は地域の文化や技術、素材、暮らしの知恵が詰まった存在であり、失ってからでは取り戻せない価値を持つとも強調されました。公共交通も一度失えば再生が難しいように、歴史的建物もなくなってからでは遅い。だからこそ、今あるものの価値をきちんと認識し、守り、生かすことが大切だという言葉がとても印象的でした。
質疑応答では、条例整備による建築基準法適用除外の仕組みや、地域住民の合意形成、専門家や仲間の巻き込み方などについて多くの質問が寄せられました。その中で繰り返し語られたのが、「ぶれないこと」「まず相談してみること」「分からないことは聞いてみること」という姿勢でした。1人ではできないことでも、思いを持って動き、周囲と対話を重ねることで、少しずつ形になっていく。その実例を、先生方の取り組みそのものが示していました。
被災地の復興というと、どうしても「元に戻す」という言葉で捉えがちですが、今回の授業を通して見えてきたのは、ただ元に戻すのではなく、その土地の記憶や文化、そこに暮らす人々の思いをどう未来につないでいくかという視点でした。
丸森と能登、それぞれの地域が抱える課題は違っても、災害を経験した地域だからこそ共有できる問いや学びがあることを改めて実感するクロッシング授業となりました。
岡田先生、丸谷先生、はるばる能登・北陸からお越しいただきありがとうございました。
私たちも能登に行きたいと思いますので、今後ともよろしくお願いいたします!
次回は12月20日に開催。
次回も「のと熱中授業」とのクロッシング開催となります。
講師は、輪島塗プロデューサーの桐本泰一先生、熱中小講師の開沼博先生のお二人による授業です。
次回もお楽しみに。












