第12期 3回目授業・のと熱中授業 10回目授業

『輪島塗の今とこれから』
『熱中小学校の10年間を分析〜価値と地域への波及効果を紐解く』
12月20日の授業は、「のと熱中授業」とのクロッシング開催として実施しました。

「のと熱中授業」とは――
能登半島地震からまもなく2年を迎えますが、現地では今も復旧・復興に向けた取り組みが続いています。一方で、全国的には報道が減り、関心が薄れつつある中、「能登のことを忘れないでほしい」という声が現地から届いています。
熱中学園では、こうした声に応える形で、能登の文化・生活・産業などをテーマにした「のと熱中授業」を、2025年4月から1年間にわたり実施しています。

▼のと熱中授業の詳細はこちら
https://www.korobocl.com/keen_class/
丸森復興分校は、2019年の台風災害からの復興に寄与することを目的の一つとして、2020年に開校しました(災害被災地での開校第1号)。
同じ“被災地”として分かち合えるもの、そして相互の学びを通じて、それぞれの地域の復興・振興につなげていきたい――。そんな思いから、今期は「のと熱中授業」とのクロッシング授業を全3回実施します。

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1時間目の講師は、輪島キリモトの桐本泰一先生、そして後半の対談の聞き手として熱中小学校講師の開沼博先生です。
桐本先生はオンラインでのご登壇です。

桐本先生のお話は、まず「漆とは何か」「輪島塗とは何か」という基礎から始まりました。漆はウルシの木の樹液から採れること、一本の木から採れる量はごくわずかであること、さらに漆の実からは和ろうそくの原料も生まれることなど、普段なかなか知る機会のない漆の世界を丁寧に教えていただきました。
その上で、輪島塗の大きな特徴である「木地」「布着せ」「地の粉を使った下地」「上塗り」といった工程についても紹介がありました。
輪島塗はただ表面を美しく仕上げるだけではなく、布で補強し、地の粉によって丈夫な下地をつくることで、長く使い続け、傷んでも直しながら使える器であることが伝わってきました。見た目の美しさだけでなく、手に触れた時のしっとりとした質感や、口当たりのやさしさ、さらには抗菌・抗ウイルス性まであるというお話には、会場からも驚きの声が上がりました。

また、桐本先生は、輪島塗の伝統を守るだけでなく、現代の暮らしや空間に合わせた新しい提案にも挑戦されてきました。器だけでなく、ホテルや飲食店のカウンター、ドア、壁面、さらには海外の空間デザインや自動車内装にまで漆の可能性を広げてこられた実践は、まさに「輪島塗の今とこれから」を体現するものでした。

一方で、能登半島地震、そしてその後の水害によって、ご自宅や工房、店舗も大きな被害を受けた現実についても率直に語られました。失われたものの大きさ、職人が離れていく不安、疲れが積み重なっていく苦しさ。そうした厳しい状況の中でも、被災した器を救い出し、新たな価値を与えてよみがえらせる「レスキュー&リボーン」の取り組みや、輪島塗の魅力を改めて国内外へ届けようとする姿勢に、深い覚悟を感じました。

後半の開沼先生との対談では、被災後の職人や事業者の状況、暮らしの変化、そして輪島塗をこれからどう世界に伝えていくかという話へと広がりました。
特に印象的だったのは、輪島塗の価値は「輪島だから」以前に、まずその質感や使い心地そのものにある、という言葉でした。手にした時の感覚、使った時の心地よさにこそ本質があり、その先に輪島という土地や職人の仕事が伝わっていく。そんな視点はとても新鮮で、ものづくりの本質を考えさせられました。

授業の終盤には、この後の懇親会で実際に使う漆器についても紹介がありました。
被災した輪島の町から救い出された器、そして丸森の蔵に眠っていた古いお膳。実際に手に取り、触れ、使いながら交流することで、漆の魅力を“知識”としてだけでなく“体験”として味わう時間へとつながっていきました。

大きな被害の中でも、漆の力を信じ、輪島塗の価値を未来へつないでいこうとする桐本先生の言葉には、ものづくりへの誇りと地域への深い愛情がにじんでいました。「守る」と「挑戦する」を同時に続けることの重みを感じる、非常に濃い授業となりました。

2時間目は、開沼博先生よる授業です。
開沼先生は、今年10月に開催された高畠熱中小学校10周年記念イベントにて、『熱中小学校の10年間を分析〜価値と地域への波及効果を紐解く』というテーマで講義をいただいております。
今回は丸森の生徒にもこの内容を聞いてもらいたいと思い、同じテーマで授業をお願いしました。

最初に熱中小学校がこれまで全国24地区で展開され、年間1000人以上が学ぶ場となっていることが紹介されました。その上で、「なぜ10年間も人を惹きつけ続けているのか」という問いを軸に、各地の事務局へのインタビュー調査をもとに分析が進められました。

開沼先生は、自身の研究スタイルについて「内側と外側をつなぐ“翻訳者”」と表現し、現場での聞き取りや歴史の掘り下げを通して、地域の本質に迫ることを大切にしていると語りました。
分析の中で見えてきた熱中小学校の特徴として、特に以下の点が挙げられました。

  • 講義後の小グループでの対話により、体験が濃密になること
  • 参加者同士の関係性から、自主的なプロジェクトが生まれること
  • 講師と参加者の距離が近く、学びが一方向で終わらないこと
  • 地域を越えたネットワークにより、人のつながりが広がること

これらは単なる「講演会」とは異なり、「学び合い」を中心とした場であることが、継続性の要因であるということでした。
また、熱中小学校は地方創生の文脈においても注目され、「再現可能で拡張可能なモデル」である可能性が指摘されました。その背景には、地域資源を活かしながら、自立的に運営される仕組みがあるとされています。

さらに、現代社会における学びの変化にも言及がありました。これからは「答えのある問題を解く力」だけでなく、未知の課題に向き合い、主体的・対話的に考える力が求められる時代であり、熱中小学校はその実践の場になっていると整理されました。

2時間目後半は、開沼先生による分析を受けて、丸森復興分校事務局への公開インタビューが行われました。
インタビューでは、丸森復興分校が2019年台風災害後の復興の流れの中で立ち上がり、現在は実質1人事務局に近い体制で、ぎりぎりの運営を続けている実情が語られました。
その一方で、学びの面白さや生徒同士の支え合いが大きな原動力になっており、「この場を終わらせるわけにはいかない」という思いも共有されました。

また、当初は災害復興や阿武隈急行支援の色合いが強かった活動が、今では人口減少や地域の持続性を見据えた「元気な丸森づくり」へと広がっていることも語られました。

会場の生徒からは、ネットワークの豊かさがある一方で、後から入る人には入りにくさもあるという率直な意見も出されました。熱中小学校が新しい出会いや挑戦を生む場であることを確認しつつ、今後はより開かれた場づくりが課題であることも見えてきました。

そして夜は、特別編の懇親会を開催しました。
桐本先生の取り組みである「レスキュー&リボーン」によって救い出された輪島塗の器を実際に使い、丸森の食材をふんだんに使った料理を囲む、まさにこの日ならではの時間となりました。

被災した家屋から救出された器に触れ、口に運ぶと、そのしっとりとした質感ややさしい口当たりに思わず驚きと感動が広がります。器ひとつで、こんなにも食の時間が豊かになるのかと実感するひとときでした。

会場は、「歳迎え展」が開催されている蔵の郷土館 齋理屋敷の居宅和室を、今回の趣旨にご賛同いただき特別にお借りして実施しました。

お料理は、丸森の名店「まんま亭・武藤」の親方・武藤重樹さんにお願いし、丸森の食材を活かした特別なメニューをご用意いただきました。

また、丸森に残されていた折敷(おしき)を活用し、さらに漆器を「真綿」で拭く体験については、養蚕文化の継承に取り組まれている阿部倫子さんにご協力をいただきました。真綿と漆器の関係や手入れの文化についてのお話とともに、実際に手を動かすことで、より深くその価値に触れる機会となりました。

こうした多くの方々のご理解とご協力があってこそ、この特別な場が実現しました。
能登と丸森、被災地同士が想いを寄せ合いながら、一つの食卓を囲む時間。
この場に関わってくださったすべての皆さまに、心より感謝申し上げます。

こうして、盛りだくさんのうちに12月授業も無事に終了しました。
今回も様々な方たちとの繋がりを感じる回となりました。

そして次回も「のと熱中授業」とのクロッシング開催となります。
講師は、一般社団法人日本カーシェアリング協会代表の吉澤武彦先生、そして一般社団法人熱中学園代表の堀田一芙先生による授業です。
次回もお楽しみに。

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